こんにちは、オフィス解体新書の杉山です。
初めてインタビュー取材に臨む時。
「上手に話を引き出す方法」や「相手との距離を縮める方法」が気になるかもしれませんが、
そもそも、初めて取材に行く人は、「インタビュー取材は、基本的にどのような流れで進むのか?」がわからないのではないかと思います。
そこで、参考までに、普段、私が一人でインタビュー取材をおこなう時の流れをご紹介します。
私は、経営者、ビジネスパーソン、大学教授、評論家、士業の方を取材することが多いのですが、
スポーツ選手や芸能人などの取材でも、流れはほぼ同じです。
少しでもお役に立てれば幸いです。
録音&メモ&撮影するツールは必ずスペアを持つ
まずは持ち物です。録音&メモ&撮影のスタイルは人によっていろいろあると思いますが、
共通して言えるのは「録音&メモ&撮影するツールは必ずスペアを持つこと」です。
たとえば、録音するツールなら「ICレコーダー2台」か「ICレコーダー+スマホ」、
メモするツールは「ノートPC+ノート」、「タブレットのノートアプリ+ノート」
と2つ以上持っておきます。
まさかの故障、うっかり電池切れ、「立ち話でノートPCが使えない」など、
現場ではいろいろなことが起こりますからね。
私の場合は以下に落ち着きました。
- ICレコーダー2台 →ひとつは内蔵バッテリー、ひとつは乾電池タイプを使用(電池も持参)
- スマホ →録音と撮影のスペア
- ノート →メモ用のメイン
- 手帳(A5)→メモ用のサブ
- ボールペン×2本以上 →赤ペンも
- 付箋 →取材中に思いついた質問項目などを貼る
- 資料
- 見本誌 →紙媒体の場合
- 質問項目 →プリントアウト。2枚用意しておくと、相手が持っていない場合、渡せる
- 腕時計 → 経過時間を確認しやすい
- (撮影が必要な場合)カメラ
- (場合によっては)ノートPC →私は何か画面を見る必要がある場合のみ
- (場合によっては)タブレット →遠方の場合はスマホの予備
さらに、録音&メモ&撮影ツールは、取材先に入る前に確認をしておくと安心です。
お恥ずかしい話ですが、この段階で「ノート忘れた!」「電池がない!」と気づいたことが何度もあります。後述しますが、ICレコーダーの片方を電池式にしているのはこのためです。
ちなみに、取材20分前に、ICレコーダーを新宿のビックカメラで買ったこともあります…。
今日の段取りを確認する
取材先に入る前に、今日の段取りも改めて考えましょう。具体的には以下です。
・取材時間
・取材テーマの再確認
・質問項目のうち、外せないもの・外せるものはどれか
ちなみに、編集者さんやカメラマンさんが同行する場合は、
・インタビューと撮影の時間配分
・取材の役割分担(誰がメインで質問するか)
をすり合わせます。
これらを確認する必要があるのは、「急に取材全体の時間が減った」「インタビューでなかなか話が聞き出せない」などのイレギュラーなことが起きた時、落ち着いて対処するためです。
とくに質問項目のなかで外せないもの・外せるものが何かを考えておくと、「あまり必要でないことを聞いてしまって最低限必要なことが聞けていない」という事態が防げます。
早く入り過ぎない
最近は、受付に受話器があって、取材担当者の方に連絡するのが一般的。「○○(媒体名or会社名)ライターの杉山と申します。○時より、××様とお約束させていただいているのですが」と説明。
早く行き過ぎると迷惑になることがあるので、基本的には、約束の時間とほぼピッタリの時間に、受付をするようにしています。
ただし、セキュリティだらけの高層ビルオフィスで、受付からオフィスまでが遠い場合は5~10分前には受付します。
コートを着ている場合は、受付をする前に脱いでおきます。
席は上座?下座?
オフィスに入ると、取材対象者ではない方が出迎えてくれることがよくあります。
その方に会議室に案内されると、たいがい上座に座るよう促されますが、とくに促されなければ、下座の位置で立って待つようにしています。
インタビュー中の写真撮影が必要で、背景の兼ね合いで下座に座っていただいた方が良い場合は、下座に座っていただくこともあります。映り込みが気になる場合は、飾ってあるものや応接セットを、確認をとった上で動かすこともあります。
いつ始まっても良いように、スタンバイ
取材先の方が来る前に、ノートやICレコーダー、質問項目などを机の上に用意します。
いきなり取材が始まったときのために、ノートは開いておき、ICレコーダーもスタンバイしておきます。席につくなり、相手が話し始めることはよくあるからです。
経過時間を確認するため、腕時計を外して机の上に置くこともよくします。
名刺交換は自分から名乗る
取材先の方が来たら、名刺交換。自分から名乗り、相手より低く頭を下げるようにしています。名刺は机の上(名刺入れの上)に置きます。複数の方が出席された時は、名刺を座った順に並べます。取材相手が座ってから、自分も席に座ります。
まぁ、このへんは、ライターに限らず、どの職種でも同じですかね。
取材の趣旨は改めて説明
お時間をいただいたお礼を述べつつ、今日の取材の趣旨を説明します。主に以下を伝えます。
・媒体概要
・記事のテーマ
・今日お聞きしたい内容
・アップ前の原稿チェックの有無
事前に企画書や質問項目を送っていたとしても、改めて説明することをおすすめします。取材相手が取材の趣旨を把握していないことはかなり多いからです。
原稿チェックがある場合は、最初に伝えておくと、取材相手があまり構えずに話してくれるようになります。
相手の手元に質問項目の紙があるかチェック
取材が始まる前には、相手の手元に質問項目の紙があるかをチェックするようにしています(PC画面で見ていることも多いですが)。
もし紙があり、かつ細かくメモを書きこんでいたら、なるべく質問項目の順番通りに聞きます。相手が質問項目に合わせて論理展開を準備していることが多いからです。
質問項目の紙がないようなら、質問を把握していないかもしれないので、質問項目の紙を渡しましょう。2部用意しておくのはこのためです。
インタビュー開始直前に、終了時間を再確認
始める前に、「今日は14時までの1時間ということでよろしいですか?」などと、取材終了時間を確認します。それによって、取材の時間配分が変わってくるからです。
1時間と約束したけど、「もうちょっと大丈夫ですよ」などと言われることはよくあります。すると、じっくり聞けるので、精神的余裕がまったく違ってきます。
「今日、午後全部空いているから大丈夫」などといわれ、1時間の予定が2時間、3時間となることもまれにあるので、取材後は余裕をもったスケジュールを組んだほうが無難でしょう。
レコーディングはひと声かけてから
インタビュー開始前には、「お話を録音させていただきます」とひと声かけてから、ICレコーダーを回します。いきなり無言で回すと、嫌がられることがあります。
インタビュー開始後は、目的を意識し続ける
インタビュー術はいろいろありますが、最も強く心がけているのは、「目的を常に意識し続けること」です。
というのは、めちゃめちゃ話は盛り上がったのだけど、インタビュー終了後、肝心なことは何も聞けていないことに気づく……というのがインタビュー取材ではよくあるんですよね。
20代の頃は帰ってきてから「何も聞けていない」と叱られ、しょっちゅう追加の電話取材をしていました。
質問項目を作れば目的からズレないと思うかもしれませんが、意外とそうでもありません。
たとえば初心者向けに「○○のコツを教えてください」という質問をしたのに、返ってくるのが中上級者向けの答えばかり。結局、初心者向けの情報が聞けなかった…などということが起こりうるからです。こうしたズレを防ぐには、目的を意識することが重要です。
ググってもわからないことはマストで聞いてくる
もうひとつ、インタビュー中に強く意識しているのは、「ググってもわからないことを必ず聞いてくること」です。
ググればわかることは聞きそびれても取材後にカバーできますが、ググってもわからないことはそうはいきません。しかも、それが原稿の根幹に関わることだと、原稿の質も下がることに…。
取材の内容にもよりますが、「ググってもわからないこと」の典型は以下の3つです。
・取材先の気持ち
→喜怒哀楽の他、悔しい、苦々しい、嫉妬などなど。ただし、もうちょっと深掘りする必要あり。嬉しいならどのぐらい嬉しかったのか、なぜ嬉しかったのか
・取材先の気持ちを表す行動
→上の気持ちを表すような行動。嬉しいなら、よっしゃーと大声で叫んだ、部屋で一人泣いた、朝まで飲み歩いた、いろいろな人にメールをしまくった、ご褒美を買ったなどなど
・取材先が感じた五感
→視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚。どんなにおいだったか、どんな手触りだったか等
これらは大切だとわかっているのに、ググったらわかることしか聞いてこられなかった…なんてことは起こりがちです。
原因を挙げると
- 質問項目をすべて聞くことで精一杯になってしまい、深掘りしそびれた
- 相手の気持ちの表現レパートリーが乏しい
- 相手がシャイで本心を言いたがらない
- 質問に答えず、自分がしゃべりたいことをしゃべくるタイプの人だった
- 塩対応があり、これ以上突っ込めなくなった
- 社会的地位のある相手に気圧された
- 相手の話術に惑わされた
など多様なパターンがあります。正直、経験がものを言うところもあるのですが、意識をしておくだけでも多少は違うと思います。
今日のお礼を述べつつ、撮影を忘れずに
ある程度お話をお伺いできたら、「読者の参考になるお話をたくさんお聞かせいただき、ありがとうございます」などとお礼を述べて、おひらきに。
原稿チェックをしてもらう場合は、いつ頃に原稿をお送りして、どれぐらいの期間で戻してもらうのが希望か、長期休みはないかなどを確認します。
もし写真を自分で撮る場合は、忘れずに撮影を。忘れないために、最初から机の上にカメラを置いておくようにしています。
帰るまでがインタビュー。チャンスを逃さない
インタビューが終わった後も、話を伺うチャンスはたくさんあります。ICレコーダーを切った途端に面白い話が出てくることは少なくありません。
撮影中の雑談でも、原稿に盛り込めそうな面白い話がよく出てきます。リラックスするので、インタビュー中と違った話が出てくるようです。それらをメモできるよう、取材場所から離れたところで撮影する時には、必ずノートを持ち歩くようにしています。
また、エレベーターホールや入り口まで送っていただく途中も、何か聞けるチャンスがありそうなら聞きます。良い話が出てきたときのために、ノートはカバンのすぐ出るところに置いておくようにしています。
自分でコントロールできることだけはしっかり押さえる
以上が通常の取材の流れです。些細なことと感じることも、実はかなり重要です。
小さなことでつまずくことで動揺し、肝心の取材が上手くいかなくなることは、少なくないからです。
インタビュー取材は、相性や相手の機嫌・疲れなど、自分でコントロールできない要因も多いですが、上で挙げたポイントはいずれも自分でコントロールできることばかり。
そうした最低限のポイントをしっかり押さえておけば、取材が成功する確率を上げられる、というのが、私の結論です。
初めての一人インタビュー取材をする時は、ぜひ意識してみてください。
うまくいくことを願っています!